3LAレーベル初のコンピレーションとなる本作は全12バンド、14曲によって構成されているオムニバス作品だ。
収録バンドは、一聴するとそれぞれのスタイルはバラバラで、何の脈絡もないオムニバスに感じるかもしれない。この作品には僕が今までレーベルやディストロとして3LAの活動を行う中で、実際に国内各地で出会ったバンドだけをセレクトし収録している。つまり、僕自身の目と耳で確かめた品質保証済みのバンドたちだ。その中でも近年注目してきた「ネオクラスト」や、「ブラッケンド」と呼ばれる音楽性と共鳴しているバンド、行き過ぎたクロスオーバーや極端な原点回帰の果てにエクストリーム・ミュージックの新たな領域を切り開いてしまったバンド達を集めている。当然各バンドのキャリアも多様で、結成から間もない新人バンドもいれば、シーンで長く活動し、大きな支持を得ているベテランバンドもいる。活動歴も活動する地域も様々だが、既存の完成された音楽だけに満足せず、試行錯誤を重ね、自身が持つ音楽性のその先を追求する姿勢にキャリアは全く関係ない。重要なのは「そのバンドがどんなキャリアを辿ってきたのか」ではなく「今、どんな音を出しているのか」だ。そう、僕は現在進行系の「今」を切り取ってこのオムニバスを作った。ここに集めたバンド達には欧米発のムーブメントとは別の面白さがある。それはメインストリームである欧米のシーンに追従するのではなく、言語や歴史、文化までも異なる遠く離れた極東で、パンク、ハードコア、ブラックメタル、様々な音楽を独自解釈することから生み出される面白さだ。エクストリーム・ミュージックのオルタナティブな可能性を、収録されたバンドの楽曲からも感じ取れる。これは確かに、日本だからこそ生まれた音楽だ。そして、本作にはリスナーの理解を助けるよう、収録バンドへのインタビューも掲載している。彼らがどんな思いで活動しているのか、何を表現しようとしているのか、僕の言葉ではなく、彼らの言葉から知って欲しい。そして、何度も繰り返しこの音源を聞いてみて欲しい。そうすれば、日本国内では孤高とも言える稀有なスタイルのバンド同士であっても、根底にあるものは通じているということがわかると思う。その不思議な共振を感じ取れたら、これはオムニバスに収録されたごく一部のバンドだけに当てはまることではなく、同様に極東のリスナーであるあなたにとっても同じように当てはまることに気づくだろう。その瞬間、音楽はただ音楽であることから姿を変え、脳から全身へと染み込んでいき、血肉となり、また新しい何かを作り出す力となるだろう。この作品が聞いてくれた全ての人にとって、何かのきっかけになることを心から望んでいる。(3LA 水谷)
1. ILIAS - 存在と理由
2. The Donor - Kagerou
3. KUGURIDO - 桃源郷夜想曲
4. KLONNS - KNIVES
5. KLONNS - SODOM
6. SWARRRM - march
7. unfaded - 漆黒
8. PRIZE OF RUST - Decade
9. PRIZE OF RUST - Spectator
10. ENSLAVE - Killing Me Softly
11. Pterion - Schwein
12. ungodly - 蝕
13. Yvonxhe - Incessant Mournful Tale
14. Vertraft - MEMORIZE
ILIAS(神奈川)
2015年結成、ex.Vulcher、Still Grieving Overのメンバーも在籍。 元々ニュースクールハードコア系、メタルコア系のルーツを持ちながらも、ネオクラストとクロスオーバーしサウンドは一気に変容。 プログレッシブかつメロディックに疾走しながら「怒り」のパッションを撒き散らす演奏は正に"ICTUS"!!
https://soundcloud.com/japan-ilias
The Donor(金沢)
ex.SEC DIMENSIONのメンバーにより2011年結成、1stアルバム『Agony』を2014年リリース、各地で絶賛を得た。 ギタリストMax氏はGREENMACHiNEにも参加しており次々と繰り出される秀逸なギターリフは折紙付。 DeafHeaven,Hexis等とも共演した実力は本物で、メタリックかつダークに染め上げられたサウンドは異様な"黒さ"を放つ。
https://www.facebook.com/thedonor666/
KUGURIDO(姫路)
2016年に惜しくも解散した姫路ネオクラストsekienとBACKTREESCARのメンバーにより結成された。 岡崎のDIEAUDEとのスプリットをリリースしているが、そのバンドサウンドの全貌は未だ明らかになっていない。 本作に収録される「桃源郷夜想曲」は完全未発表新曲で、ジャパニーズ・ネオクラストを標榜する彼らの新たな一面を覗かせる。
http://s.maho.jp/homepage/0989c1ja0e85d465/
KLONNS(東京)
2015年突如シーンに登場した東京ブラッケンド・ハードコア。 極端に歪ませまくるディストーション、そしてメタリックなギターリフに禍々しいボーカルの叫びが呼応する。 ノイジーでブラッケンドな現代型のハードコアだが、それは古典的なRAWパンクを現代的な感性で再構築しようとしている。
https://www.facebook.com/KLONNS/
SWARRRM(神戸)
結成20年を超え、尚も自らのサウンドを更新し続ける神戸のグラインド帝王SWARRRMも新曲で本作に参加。 killieとのスプリット『耐え忍び霞を喰らう』でみせた"歌"の要素は本作でも見事にハードコアサウンドと両立されているが 収録曲での表現は、よりブラッケンドハードコアに寄せられている。全ハードコアファン必聴の新境地。
https://www.facebook.com/SWARRRM-424645447621824/
unfaded(奈良)
2007年結成、RAWでメロディックに疾走するネオクラストが奈良から登場したのは驚きだった。 元々はスラッジバンドで活動していたというが、試行錯誤の末にネオクラストに辿りついたというバンドの歴史は深い。 Neurosisにも影響を受けた叙情性と哀愁に満ちたメロディ、熟考の末に導き出されたサウンドはそれ故の説得力を放っている。
https://twitter.com/believer77xx
PRIZE OF RUST(茨城) 2009年結成、いくつかのデモ音源をこれまでに発表、本作には未発表曲2曲で参加している。 1曲はリフ主体、もう1曲はメロディ主体という性格の異なる2曲でネオクラストにアプローチしているのは非常に興味深い。 メロディックに疾走しながらツインボーカルの掛け合いによるスリリングな展開も健在!
https://prizeofrusthc.bandcamp.com/
ENSLAVE(東京)
「ネオクラスト」という言葉が生まれる前、すでに日本でそのようなサウンドを確立していたのがENSLAVEだ。 本作には名盤『FAR EAST HARDCORE PUNK』のバンドのイメージとは異なる8ビート主体の新曲が収録されている。 男女ツインボーカルの掛け合いはそのままに、体感速度を加速させたビートとギターリフの応酬が凄まじい。
https://twitter.com/enslave_kkh8ckd
Pterion(京都)
関西圏から新たなブラックメタルが登場するのは非常に珍しい。 結成2017年という彼らの歴史はまだ始まったばかりだが、オールドスクールなブラックメタル、ハードコア、ドゥーム等を現代感性で消化し表現される新世代の音楽がそこにはある。 静と動のあるドラマチックな楽曲だが、醸し出される近寄り難い不穏な雰囲気は正にブラッケンドのそれだ。
https://twitter.com/pterion1349
ungodly(香川)
2013年結成、発表された2枚のEPは各地で大絶賛を獲得した香川の3ピース。 At The Gates直系のメロディックなギターリフとボーカルの咆哮、怒涛のブラストビートを叩き込むドラムも驚異的なフィジカルを誇る。 本作では既にソールドアウトし廃盤になっている1st EPから「蝕」を収録、7分の長編で描くブラッケンドスラッシュの極地。
https://twitter.com/ungodly_black
Yvonxhe(大阪/東京)
2011年東京と大阪のメンバーにより結成され、海外からも注目される国内ブラック。 ハードコアパンクにも影響された疾走感が特徴で、和的メロディを取り入れたサウンドには純正ブラックメタルとは異なる独特のキャッチーさがある。 本作に収録される新曲もD-BEAT、ブラストビートを織り交ぜたブラッケンドな響きを聴かせている。
http://yvonxhe.jp/
Vertraft(東京)
2014年結成、ENSLAVE、noy、even todayといったバンドのメンバーによって構成されている。 一時期はEkkaiaのようなベースボーカル+ツインギター体制であったが、メンバーチェンジを経て2016年に発表したEPでは完全に暗黒のブラッケンドサウンドへと変貌を遂げている。 本作では未発表曲を収録、カオティックな暗黒の音の洪水でアルバムを締めくくる。
http://vertraft.black/