今作は我らが中間世代の現在の一つを突き詰めた濃厚alternative/emotive punk splitであり、共に双方バンドの創作の充実を感じずにはいられない待望の初アナログリリースである。
DEBAUCH MOOD8枚目のリリースはDAWN/SHIPYARDS split(12")。
DAWN:
2002年青森にて結成、Gt/Vo柴田が別に活動するDAIEI SPRAYと並行しつつ青森にて活動を続ける。
数年の活動の後、DAWN一時活動休止の為メンバーのマイナーチェンジを経て、the scott vegetables(現在解散済)として前述のDAIEI SPRAY(現在Dr募集中)と共に東京に活動環境を移行。双方ともに大きなリリースはなかったものの、多くの自主企画やライブ出演・細やかなリリース〜VA参加などの堅実な活動を続け人気を得る。
その後突如結成時のメンバーにてDAWNを活動再開、強い個性を放った『S/T』CDを自主にてリリースさせたのが2013年の事であった。
今作は前作からなるそんな彼らの内に燻ぶる熱源をより押し進めた、ガンガン重心下腹部に来るウネる土台が強固な3曲を収録。ドライビング感溢れるギターサウンド且つワイルドに響くグルーヴは分厚く、ウィットにドロドロな質感とどこか惚けた力の抜け具合にて全体の空気を引き立てつつ攻めの数分間を各曲で演出している。
往年の日本的解釈をベースにしつつ、後期NAKED RAYGUNやBHOPAL STIFFS、RIGHTS OF THE ACCUSED等なIain Burgessが関与したあたりのシカゴPUNK勢〜GOVERNMENT ISSUEの『YOU (LP)』等の後期ワシントンPUNK勢に及ぶまで。どう考えても明らかにチョイスが渋すぎる解釈から、Dave Grohlの初期キャリアであったDAIN BRAMAGE、イギリスにおける『後期のメロディアスな無政府主義的バンドと、新しい波の上にあったHARDなR&R BAND』の音楽的混血として生まれたHDQなどに通ずるあの時代のギターバンド感。そしてDUSTやLEGIONAIRE’S DISEASE(BAND)などのパワーバンド勢の体幹までもをどこか感じさせるような凝縮モノとなっている。
最早毎聴時体力を削られる(笑)程に突き進み、決して極端な感情の荒げ方ではないある種冷淡な姿勢との合わせと相まって強い個性がにじみ出る、ちょっと簡単には語りつくせない入魂具合に今後の多くを期待するには十分すぎるこちらがAside。
SHIPYARDS:
2008年結成、東京は西に位置する八王子を中心に活動。数回のメンバーチェンジを乗り越えた後立て続けにアルバム2枚(CD、2013〜2014)をリリースする。とにかく前身バンド時代から評価を得ていたそのメロディーメイカーとしての華はより深化、そのままバンドのポテンシャルと共にフル炸裂したアレンジ力との相乗の大成功により、名実ともに一躍その名を知らしめる事となったのがここ2年間の出来事であった。
前身として過去八王子にて活動したSUFFERING FROM A CASE(※2003〜2008年Gt/Vo篠沢を中心に活動)での血管切れかけ慟哭エモーショナルPOPパンクからの音楽性を振り返るに、現在の到達点はある種の完成と今後の展望に大いな期待と想像力を掻き立てられる。
そんなバンドとして記念すべき初アナログリリースである今作Bsideは、前述にて触れた独自のメロディアスなライン(どこの国的とも形容し難い)のより生々しい要素を抽出。毎聴時に様々な側面が無邪気に顔を出すその感覚は本当の意味で『青い』という言葉が当てはまるのかもしれない。支えるは内向的かつつぶさにに衝動を放出し続けるギターと、スムージーではあるが決して爽やかとは例えがたい無機質かつ淡々と準える・描くリズム隊。それらがじわじわと繋いでいく。
彼らが公言するSUPERCHUNK(特に92年頃までの尖っている時期)や緩やかに在るPAVEMENT風味、または後期SEAWEEDなど当時のまさに『あの手』のバンドからの影響を引き算しつつ今の型に捻じ込み、そこから清涼感か枯渇感どちらなのかとイメージが錯綜していくような特殊な曲群は、現行ではピッツバーグのTHE GOTOBEDS、はたまたTHE EMBARRASSMENT『Celebrity Art Party』とTHE SLICKEE BOYS『Here To Stay』(強引でしょうか笑)の掛け合わせなのでは!?とすらイマジネーションを巡らせてくれる。
そしてAIR PLAYやPILOT等の所謂ムーディー・メランコリックな過去のビックバンドの空気感に歩み近づこうとするかのラインの方向性など、一聴した印象をじわじわと崩し浸食していくような聴覚の入口が多分に用意されているのだ。