Ryo Kobayakawaのビート、音楽を聴いてきた人間は、このDJ/プロデューサーの背景にどんな音楽があるのかを気になっていたはずだ。そして、この、全30曲が収録されたMIXCDはその一面を、惜しみなく見せてくれる。なるほど、彼の洗練されたセンスの一端を知ることができる。
もし、トラップを聴き飽きたという人がいたならば、実はトラップというビートのフォーマットは、何とも自由であることに気づくだろう。このフォーマットが他のジャンルの音楽とこうやって接続していくのか、と。Ryo Kobayakawaは、うねるベース、
ラップやヴォーカルやメロディを繊細に聴き取り、要所で横断的にミックスしていく。不幸にも今年この世を去った米国の2人のラッパーの曲もさり気なく美しく聴かせる。
かつて英国のクラブ・シーンからは「JAZZ NOT JAZZ」なんて上手い言い回しが生まれたけれど、このMIXは、「TRAP NOT TRAP」と言えるかもしれない。現行のメロウ・トラップ・ミュージックの快楽を味わうには最高の代物だ。