SL'S3...
SL'S3は2000年から2004年までスペインで活動していたハードコアバンドで、ネオクラストMadame GermenとグラインドコアNashgulのメンバーにより結成。音楽的なジャンルで言うならば「激情ハードコア」、海外の表記でいうなら「Screamo」ということになるが、そのサウンドは様々なジャンルからの影響が交錯しており一言で説明することは難しい。
2003年にデモEPを発表、そして2004年に彼らのサウンドを完成させた本作"Con La Venda Hacia La Pared"をリリースし燃え尽きるように解散している。解散後のメンバーはBluntをはじめいくつかのバンドを結成しており現在Bluntは活動していないがHongoやBlack Pandaでの活動は健在であり今もシーンと強く関わっていることは間違いない。
彼らの特徴はメロディックで叙情的なメロディとエモーティブな絶叫ボーカルといったスパニッシュ・ネオクラストの伝統芸とも言えるサウンドを基軸に、ポストロック、クラスト、グラインドコアの要素も感じさせ斬新なアイデアが随所で取り入れられていることが挙げられる。当時には"新しい"という評価をされなくともネオクラストとポストロックのクロスオーバーとも言える視点で作られた楽曲は様々なサブジャンル間で合体、変形を繰り返し続ける沸騰中のシーンの混沌を体現したかのようなカオティックなサウンドであり、荒々しい録音状況や社会や己への怒りに満ちた歌詞と相まって同シーン内の音源でも異彩を放っている。しかしEkkaia,Madame Germen,Ictusなど当時のシーンを代表するバンド達と強い繋がりを持ちながらもその評価は一部に留まっており、非常に限定的である。Das PlagueやMass Mierda等と同じくシーン黎明期を支えながらも未だ正当な評価を受けていないバンドのひとつであるとも言えるだろう。
今回のCD盤リリースに伴い、日本語対訳とWEBには掲載していない情報を詰め込んだライナーノーツをつけています。彼らの怒り、苦悩、閉塞感を感じられる内容となっているので是非手に取ってみて欲しい。