ゆったりとしたテンポで進むひずみと美しさを往復するギターの調べとウィスパー・ヴォイスによる「A Couple (of Blunts)」、ラヴァーズ・ロック「夢の恋人 ft. seizo (Lovers Rock Edit)」、控え目なシンセ・ベース、ヴィブラフォン、パーカッションなどから構成された「iiwake」といった心地の良いナンバーが並ぶ。tofubeatsの楽曲に参加したことでも知られる、1989年生まれのシンガーソングライター/マルチ・プレイヤーのセカンド・アルバムは、いわばソウル・ミュージック×レゲエ×ドリーム・ポップ×渋谷系の幸せな結合。90年代の音楽を想起する人もいるだろうし、ララージやメン・アイ・トラストから溢れ出す多幸感に近しいものを感じ取る人がいてもおかしくない。けれども、ただただ幸せな夢見心地の気分を味合わせてくれるだけの音楽ではない。「ギャングだったあの頃」といった意味深な曲名に暗示されているように、洒落たサウンドに乗って耳に飛び込んでくるちょっぴり物騒なリアリズムもまたこの作品の魅力だ。すべての楽曲の7インチ化を切望する声が聴こえてきそうな全9曲。